『戦極MC BATTLE ROYAL 2017』を見てきた。
入場無料で豪華な出演者を見ることができるとあって、大型の台風が接近している中でも渋谷SOUND MUSEUM VISIONには大勢の人が集まった。
NASTYのライブからスタート。
じょうのあおりで会場は早くもヒートアップする。
続いて言xTHEANSWERとEINSHTEIN。
『フルボッコ』というタイトルの新曲はフックで観客が声を出すところがあって、これからのライブで盛り上がりそう。
3番目に6月のフリースタイルダンジョン出場権をかけたチャレンジャーズ・カップ出場者で結成されたBOZ FAN CLUBが『BOZ IS LIKE』を披露し、NoZu、N0uTY、D96、抹、磯友、ハハノシキュウがおのおののラップスキルを発揮した。
最後にはチャレンジャーズ・カップで優勝したBOZが飛び入りしたが、彼にダンジョン出場権を奪われた他のMCたちは、BOZが気持ちよくラップしている間にステージから去ってしまう。
このイベントはファッションブランドのNEW ERAがスポンサーとしてついていて、司会の八文字とMC正社員もNEW ERAの服を着て登場。
今大会はバトルロイヤルという形式でおこなわれた。
MCが4人ステージに横並びになって、8小節ずつラップしていく。
かつてB BOY PARKの出場希望者が多すぎたときに予選でおこなわれたとされ、今年の戦極U-22の予選でも一度試みられたが、この形式をメインで大会が開かれたのは珍しい。
出場者も手探りな中、1回戦の第1試合はじょうがムノウ、KissShot、SHAMA-ZOを一言ずつdisで切り捨てて勝利。
全員が敵である一方で、NillNicoのレゲエフロウにワッショイサンバ、TERA_Z、かほが一体となって盛り上がるという光景も見られた。
フリースタイルダンジョンで注目を浴びたフランケンは、早口ラップで観客の絶大な支持を得て勝ち進む。
ライブショウケースに、今回はバトルにも出場しているMasa&トラヴィス・スットコ。
春に活動を休止したが、復活して初めて臨んだ凱旋MCバトルで優勝し、ライブにも引っ張りだこで勢いに乗る。
『Hate This Cow』ではNoZuとTEITOも登場した。
EPが2枚とMVを準備中と告知し、MC正社員から「来年、再来年あたりはMasaの年になると思う」と太鼓判を押されると「もっと早いすよ」と自信をうかがわせる。
Masaから「横浜のパイセン」と紹介を受けたNonkeyはDJ CANと即興感満載のライブをおこない、観客とやり取りをしながら会場を盛り上げていく。
死の淵から帰ってきた男の歌う「大丈夫」という言葉は重みがある。
40人の出場者を4人でのバトルロイヤルで10人に絞り、敗者の中から選抜された12人が1対1でバトルして勝った6人と合わせて、2回戦のバトルロイヤルをおこなう、という順番で進められた。
SHAMA-ZOとMAKAのセッションのようなソウルフルな対決などがあった。
ライブショウケースで、最近活動を再開したばかりのLick-Gが11月発売のニューアルバム『有題』の曲を披露。自分のバトルやフロウを真似するラッパーが増えているが、自分としてはそれは構わない。彼らは売名のためにやっていると思うが、自分が音楽活動している理由は誰かに理解されたいからだ、と話す。
Jinmenusagiは浮遊感あるサウンドで独特の空気に会場を塗り替える。
MCバトルが若者の人気を集めている状況を少し距離を置いて楽しんでいるような話しぶりだった。
ベテランのチプルソはヒューマン・ビートボックスやMPCなどを駆使して「一人宇宙」のステージを展開。
『淡い』を歌う前にリリック「Yシャツ」にかけて平松愛理『部屋とYシャツと私』のサビをビートボックス混じりでやったが、若い観客には伝わったのだろうか…。
準決勝第1試合は下ネタラップのゆうま、歌うようなフロウのTERA_Zも健闘したが、正攻法でライブや音源の良さを誇るNillNicoとギャグラップのミステリオが残り、1対1でNillNicoの過去のバトル内容をネタにして「ギャグラップとバカにするけど、お前は俺のラップで笑ってるだろ」と攻めたミステリオが決勝進出。
準決勝第2試合では実力者たちの中で「無名」と罵られながらも若手の百足が存在感を示した。
勝ち上がったのは、じょう。
J平が「一世を風靡 前略ストリートの上から」と哀川翔や柳葉敏郎が所属していた路上パフォーマンスグループ一世風靡セピアの『前略、道の上より』と自分の活動を重ねて引用すると、次のMasa&トラヴィス・スットコが「前略」と同じく手紙の書き出しで使う「拝啓」で受ける。この化学反応がバトルロイヤルという形式だと生じやすいのかもしれない。
SHOHEIが「フランケン つまんねえ」、D96が「早口なら誰でもできる」、夢句が「お前は観客に笑われてる」と集中攻撃するが、フランケンがラップを始めると観客が沸き、内容が聞き取れなくても沸き続けるので、他のMCは苦笑するしかなくなってしまう。
こういう構図が生まれるのもプロレスのバトルロイヤルではよくあるので、それが見事に実現したのも今大会の成功を物語っていた。
決勝ではフランケン、Masa&トラヴィス・スットコ、じょう、ミステリオの4人でおこなわれ、ミステリオが「焼きつけろお前らの目の中に 未来は俺らの手の中に」と、このイベントのオープニングDJタイムでかかったTHA BLUE HERB『未来は俺等の手の中』を引用。
さらに他の3人と違って自分だけダンジョンに出てないので出せと言うと、じょうから「どうせFORKに負けるだろ」とdisられたが、それにFORKのモノマネで返した。
じょうもミステリオに標的を定め、「お前のラップは子供だまし、俺が見せてやんぜ男魂」と攻める。
観客による判定でじょうとミステリオが残り、8小節×4本の1対1バトルを延長まで戦い抜いて、じょうが優勝!
賞金5万円と来年2月の戦極17章の出場権を獲得した。