晋平太と漢 ~フリースタイルダンジョンから読み解く~
ライター:MC派遣社員(@prpmqjjpmzrm)
みなさん、こんにちは。
MC派遣社員です。今日の話題はフリースタイルダンジョン、最強の挑戦者、晋平太についてです。
今週の放送でサイプレス上野、MC漢まで倒しましたね。
しかし、ツイッターをあさってみると、意外とMC漢戦の判定に納得いってない方が多い。僕はかなり納得なので解説していきたいと思います。
その前になぜ晋平太と漢が不仲なのか、簡単に説明いたしますね。(何の資料もなしで思い出しながら書きますので、足りない点、間違ってる点あればご指摘お願いいたします)
「ライブラとUMB」
まず、MCバトル最大規模の全国大会「UMB」は漢が作ったものです。
2005年に始まりました。その大会は次第にライブラのものとなり、漢のもとにもDVDの収入などが一部入っていましたが、それも最終的には0になります。
このころからライブラレコードには不穏な噂が流れていました。ライブラの社長が社員に暴力をふるったり、給料が未払いということです。
これに対して、MC漢が立ち上げた9sariグループはライブラの社員と共に、法廷で戦う道を選びます。
裁判の争点は社員に対する社長の横暴と、UMBの商標問題です。(UMBの商標問題については、周知性の点において、ライブラ側が第一審で勝訴することになります)
「UMBの司会とKOKスタート」
2015年には、漢が「自分が作ったUMBを自分の手で終わらせる」と、ファイナルUMBを開催することとなります。これが後の、KING OF KINGS、つまりKOKの第1回大会です。
一方、晋平太は最後にUMBで優勝した年(2011年)の翌年からライブラにUMBの司会のオファーを受けます。ダースレーダー、前司会の太華などに相談もしたそうです。2人ともそれについては反対でした。しかし、晋平太はご存知のとおり、UMBの司会を引き受けることとなります。
MC漢ももちろん晋平太に「ブラック企業」であるライブラレコード主催のUMBの司会をやめるように言っていました。しかし、漢も晋平太にも家庭があることなどを考慮し、すぐにやめろ、という内容では無かったそうですが。
晋平太は1度話し合いの場を設けるため、ダースレーダーを通じて連絡を取り、漢と車の中で2人きりで話し合うこととなります。
この話し合いで、フリースタイルなどを行なった2人は和解し、UMBをやめることを晋平太は誓います。しかし、晋平太は翌年も司会を降りることなく続投しました。
漢は晋平太に「ライブラの社員では無いのか?」ということを尋ねました。
晋平太は「違う」そう答えました。(これ以後もたしか何度か2人は話し合いをしているはずです)
この話し合いはフリースタイルダンジョンで共演する前にケリをつけようということだったようです。
しかし、晋平太はライブラからアルバムをリリースし、さらに、晋平太がライブラのオフィスで仕事をしている写真が出回ったそうです。
「晋平太の不穏な噂、拙者が運転者」
ファイナルUMBが開催されようとしている時期、こんな写真がネットで出回ります。
9sariグループ主催のUMBのロゴが崩れ落ちていくデザインに、
RIP The Chain(安らかに眠れ、鎖)と書かれたTシャツを晋平太らしき人物が着用している写真です。これには漢もダースレーダーも怒りを覚えたはずです。
そして、拙者が運転者事件。漢がダースレーダーと公開したUstreamにて、以前行われた鎮座DOPENESSvs晋平太内での晋平太の「その戦車、拙者が運転者」という有名なパンチラインについて言及します。
漢「運転者なんて言葉ねえから。」
これについては、「運転者という言葉もあるが時系列の点について指摘したかった」と、後のUstreamで漢が弁明します。
しかし、晋平太はそれ以降行われたバトルでそのワードを多用することになります。
この一連の流れをくんで、特にライブラの件で、般若と漢にフリースタイルダンジョンを降板させられたようですね。
そして2016年を最後にライブラとの決別を晋平太は決意します。
「1度目の対戦、そして最終決戦へ」
2017年頭には代々木公園で行われた「渋谷サイファー祭り」において、晋平太対MC漢のバトルが行われましたが、特にそのことについてしっかりと対話が行われることなく、MC漢が勝利を収めます。この時、両者は全く目を合わすことがありませんでした。
2017年。晋平太はついにフリースタイルダンジョンのチャレンジャーとして漢と勝負することになり、目と目を合わせた「真っ向勝負」を挑むことになりました。
「フリースタイルダンジョン」
まず1試合目。ビートはフリースタイルラップの歴史を築いてきたMC漢と、最強のフリースタイラーとしてダンジョンへ乗り込んだ晋平太にふさわしい「かみさま(PSG)」
晋平太「貼られてる?惨めなレッテル?ならこの場で剥がし、叩き返す。」
漢「弱いものいじめ。だったら惨め。ちげえよ。勘違いすんなよ。けじめつけに来たんだろ。ケリつけに。」
晋平太は全てを清算しにきたことを語り、MC漢も全て真っ向から話す姿勢での戦いが始まりました。
晋平太「司会も降りた。審査員も降りた。あんたのシナリオ通りな。」
晋平太「【コンプラ】とあんたでタイマンはれ」
漢「お前が降板した理由。お前クビになったんじゃねえよ。俺と般若に嘘ついてクビ切られたんだよ」
これが先ほどの一連の騒動につながるわけです。【コンプラ】は恐らくライブラの社長の名前でしょう。
この勝負は後攻ながらバトルの主導権を握った漢に軍配があがりました。審査員からすればクビ切りの理由を暴露した漢に対して「言っちゃうんだ!」という気持ちもあったでしょうし。
ただ、晋平太も先行を選択した上でしっかりとリズムを作って果敢に攻めていたので3:2と、票が割れたのは納得でしょう。
ちなみに僕なら晋平太にいれます。
「2試合目」
ビートは文字通り「真っ向勝負」
晋平太「真っ向勝負、これは最初で最期の大勝負」
晋平太「ここぞとばかり、心と魂、込めて会話しに来てるぜ」
漢「代々木の予習復習してきたけど、お前は俺に復讐するために悪魔に魂売ったんだろ?」
悪魔とはライブラのことでしょう。ちなみに最近ちょいちょい出てくる「カレンダー」はこちらから買えます。
漢「ストリートだったらとっくにボンッ!一発でワンパンでK.O.してるに決まってんだろうが。テレビだからしょうがないでしょ。あー畜生。めんどくさいこのアーティスト、気取りじゃつまらねえぜ」
あくまでラップで話がしたいと。あー畜生とアーティストの韻はたしか以前にも漢は使ったことがあったかと思いますが、メジャーデビューをした晋平太に対して放った今回が最も有効に決まった瞬間であったでしょう。
晋平太「9sari、【コンプラ】?知ったこっちゃねえ。嘘ついた?俺を鎖で縛んな。それと天秤ではかんな。」
【コンプラ】は【ライブラ】でしょう。ライブラとは元々、てんびん座の意味。9sariを鎖、ライブラを天秤に置き換え、うまく言葉の面白さを伝えました。
ここまで、会話を成立させた上でずっと韻を踏み続ける晋平太に軍配があがりました。
このレベルでそれを実現できるのは恐らく日本で晋平太くらいでしょう。鎖、ライブラの言葉の使い方もうまくハマりましたし、これも納得です。3:2でまたも票が割れ、多くのヒットポイントを決めた漢を勝利と見た審査員がいたのもまた納得です。
ちなみに僕なら漢にいれます。
「3試合目」
ビートは「野良犬feat.ILL BOSTINO(刃頭)」。この曲の歌詞を何箇所か抜粋します。
「征服を繰り返すエゴイズム
オルガズム乾かない網膜
中指はおっ立つ
風向きがそっぽを向いてしまう前に噛み付く2度と俺の顔を忘れないくらいに」
「消費速度には騙されないあいにく我ら騙されない
初期衝動以外には口を挟ませない」
「わかってるからこの首輪のことを聞くな
お前もそのうちこの手の絶望を知るさ」
晋平太と漢の内情をテレビに写しているからのこの一曲なのではないでしょうか。
晋平太「KOKつくった。それは素晴らしいと思うよ。だけどマイクは憂さ晴らしの道具ではねえよ」
漢「KOKもお前がいなかったら出来なかった大会。ありがとな。晋平太」
ここから徐々に互いを認め合うリスペクトが見られます。
漢「OK、ブームに乗るより文化に残す。俺はそのためにこういう番組にも出てる。」
これは素晴らしいパンチライン。頭韻をしっかり踏みつつ、フリースタイルダンジョン最期の勝負で自らの総まとめとなるようなライン。
晋平太「俺だってあんな言われ方して司会続けんの嫌だぜ。辛かったぜ。恨みたかったぜ。でもな本心で言う。漢くんのこと好きだぜ」
漢「…3年目だぜ。残念だぜ。懺悔はもういらねえ。さっさと俺と手を繋げ。」
晋平太「だけど、けしかけた手下じゃねえ。拙者で決めたんだ」
このあと漢が
「みんなの輪から外れんなよ」
「恩着せがましく言うわけじゃねえ。楽しい音楽作りたいだけ。」
と締め、晋平太の勝利となります。
晋平太からリスペクトを込めた点や、またそのラインで韻を踏み続けた点、さらに次のステージへの覚悟を語った点から晋平太の勝ちで申し分ないでしょう。
漢はそれを受け取り、負けというより勝ちを譲ったという形なんじゃないでしょうか。(手を抜いて勝たせてあげたなどという意味ではありません。)
2015年のライブラUMBのヒダディによる紅桜への敗者インタビューの際に、ヒダディはこんなことを言っていました。
「気持ち良い負け方ってあるよな。MC漢みたいな。」
まさにこのことかな、と。
晋平太と漢の間の因縁はこれにて一旦終止符が打たれました。
漢にとっては、ライブラとの決着。
晋平太にとっては、バトルシーン、ヒップホップシーンを盛り上げる、そんな未来が迎え撃ちます。
バトルは果たしてどうなるのでしょうか。まだまだ目が離せません。
画像引用:Abema Twitter