R指定vs晋平太。フリースタイルダンジョン史に残る注目のバトル解説
ライター:MC派遣社員(@prpmqjjpmzrm)
こんにちは。MC派遣社員です。昨晩のR対晋平太、みなさんもう見ましたか?
白熱の一戦でしたね。2人の歴史と共に昨晩のバトルを振り返っていきましょう。
B-BOY PARKの生き残り
1999年から始まったBBP(B-BOY PARK MCバトル)はKREVAの三連覇で幕を開けました。
KREVAスタイルの押韻主義ラッパーが増える中、般若、漢のような、自分との戦い、相手へのアンサーを武器にするラッパーが徐々に増えていきました。
PONY、鎮座DOPENESSなどのBBP、UMBの優勝からもわかようにそこからフローがMCバトルの判定要素に加わっていきました。
そして、2010年以降、バトルブームの盛り上がりと共に、相手の過去のバトル、バトル歴などをもとに戦うスタイルが増えました。
これ以前は、般若、鎮座、KREVA、漢のようにすでにアーティストとしてプロップスを得ていた存在がMCバトルとして絶大な力を持っていたことでしょう。
しかし、UMB2010年、2011年晋平太の2連覇、2012、2013、2014年のRの3連覇からバトルで勝ち上がったMCがアーティストとして活動の幅を広げていくという現象が起こりました。晋平太が初優勝した2010年のグランドチャンピオンシップの1回戦でこの2人はぶつかります。
「俺はB-BOY PARKの生き残り
まるでMACCHO(オジロザウルス)耳元に」
「今日勝つために生まれて来た。
今日勝つために立ち上がった。
今日勝つために負け続けた。
俺が晋平太。それがわかるか?」
この晋平太のパンチラインはこの時に生まれたものです。
アンサーを返し、韻を踏み続ける晋平太に対し、
R-指定は梅田サイファーで培った高いライミングスキルで応戦。
結果は延長を繰り返した末、晋平太に軍配があがりました。ちなみにR-指定は次の年でも1回戦でDOTAMAに敗れます。
チャンピオンの引退と新チャンピオン
晋平太の無双時代だったともいえる晋平太の2連覇の期間が終わると、晋平太はマスターオブセレモニーとしてUMBの司会を務めることになります。
R-指定はその2012年から3連覇を果たすことになります。
変則ビートもお手の物、重ねたバトルの歴史から出るアンサーは重く、ライミングスキルも一層アップした彼を止められるものはいませんでした。
これもまたR-指定の無双時代だったでしょう。「韻」の強さが再び広まり、そのせいか、このころ始まった高校生RAP選手権も韻を武器に戦うMCがほとんどです。
反対にこの2人のようなある種言葉遊びや韻のテクニックなどを使うMCが増える時代に批判的な意見を持つMCがいることも確かです。
MOL53「あれ?韻踏まないと内容が無くない?」
(vsR-指定UMB2013)
呂布カルマ「お前が持ってきたんだろその価値観」
(vsR-指定UMB2014)
呂布カルマ「お前が2回獲った後、UMB急速に面白くなくなった」
(vs晋平太 戦極U22エキシビジョンマッチ)
現在について
そんな逆境がありながらもR-指定はフリースタイルダンジョンのモンスターとして、チャレンジャーの進撃を食い止める役目として開始以来わずか4敗しかせず、役目を果たしました。
一方の晋平太はUMB春選抜やスポットライト、戦極などに出るものの優勝という成績を残すことはありませんでした。しかし、出るたびにベストバウトを残し、その力の衰えが無いことを証明してきました。
そんなフリースタイルブームの火付け役の一因ともいえる2人の試合が般若を目前とするチャレンジャーとそれを食い止めるモンスターという立場でやってきました。
はたして、どうなるのでしょうか。
1試合目
ビート 俺の勝手/呂布カルマ (Apple Musicについてはこちら)
呂布カルマの代表曲です。
「あの時俺が思ったこと半分でも君に伝わってたら、勝手だがなんか変わってたか」
さあ、先攻はR。
R「お待たせ、ラップオタクの出番だ、fromコッペパンだ、こんなやつコテンパンだ!」
いきなり過去の試合のセルフサンプリングで攻めます。
R 「貰った“菊の花”蹴っちまった“牡丹”のかけ違いで“薔薇薔薇”になった筋
でも“桜”はいないだろ?わかるか?でもお前みたいなMC死人に“梔子”」
このレベルのワードプレイを即興で出来るのは恐らく日本ではR-指定くらいてしょう。
次のターンR
いじめっ子→七面倒→七面鳥→イミテーション→死んでんぞ→生きてんぞ
このRのバースから完全に「韻」での勝負に切り替わります。過去のサンプリングや花のくだりに晋平太がここまで通り韻の連打で返したことからそうなったでしょう。
晋平太
心電図を→真剣勝負→知ってんぞ→イミテーション→地位名誉(→コレクション)→意味ねえよ→見てえよ(→その程度)
かっこ内は後ろだけ踏んでいるところですが、並べてみるといかに晋平太がフリースタイルがうまいかわかります。韻は数多く踏めば踏むほど意味が勝手に繋がって来たりもするものですが、晋平太は一貫して会話をやめず踏み続けます。
R
「胸を張って来た体張って来た。やって来たんだよ、3連覇、お前が拝んでない景色を拝んで来た。全然違んだレベルがよ。」
R-指定は最後に韻を踏み続けることに失敗したわけですが、この話のアンサーとして晋平太は
「俺は辛かったぜ。でもズラからず裏方やったぜ」
とかなり高度な韻を使います。さらに小節末まで韻を踏み続けました。
この試合は3:2でR-指定の勝ちとなりましたが、元々韻重視のスタイルのRはここから晋平太のリズムに乗っかっていく形となります。
2試合目
ビート The R/RYUZO (Apple Musicについてはこちら)
このRECでライブを行ったRYUZOのビート。R-RATED レコードのRYUZOのThe Rではあるが、これはR-指定のRともかかっているのかな、と。
Rが3連覇と2連覇の違い、裏方に回ったのではなく回された、と晋平太をディスります。以前Rは「ワケあり!レッドゾーン」という番組に出演した際に先攻の強みは「話題作り」が可能であることだと話していました。しかし、晋平太はすごい数の韻を踏み、それをかわします。
そこでまたこのバトルも2ターン目からはひたすら韻の踏み合いです。
こうなるとRのディスはどんどんと力を弱めていきます。Rの期待値とそのディスの弱さに差がつくほど晋平太が優勢というよりRが劣勢になっていたように思えました。
ちなみに途中出て来たあいうえおキングはこれです。
このバトルは晋平太の勝ちでした。
3試合目
ビート コンビニ/NORIKIYO (Apple Musicについてはこちら)
こちらはNORIKIYOの新アルバムBouquetの収録曲です。めちゃ良いアルバムなのでぜひ。
R「自分で言ってんな。お前は変な宗教で俺がキリスト。キリストではなくリリシスト教祖誕生。連れてってくれよ東京観光。」
漢戦の「はまりかけたぜ怪しい宗教」のラインを使って、自身の楽曲名「教祖誕生」を引用する非常に巧みな即興です。
それに対し、
晋平太「お前は強ぇんだよ。お前は主演だよ。お前が助演じゃ共演者達が泣いてるよ。」
Rの「助演男優賞」に絡めたアンサーです。そこから新興宗教→ヒップホップ中毒→執行猶予→一生の住所と見事なライミング。
2バース目はお互い内容が薄かったかな、という印象でしたので韻の数が多かった晋平太が一歩有利という感じでしょうか。
そして晋平太の最終ターン。
晋平太「お前クソみてぇにかっけえな。お前に全部負けた。だけどバトルだけは負けたくなかった!」
ダンジョンならではのチャレンジャーの主人公性が現れるラインになりました。
ロバートデニーロとジョーペシは仲が良く、共にアカデミー助演男優賞の受賞経歴があります。デニーロの監督をし、出演した映画にはペシも出演しています。ハリウッド詳しくないのでこんなもんしかわからないですが、、
このバトルも晋平太の勝ちとなり、晋平太が勝利することになりました。
純粋なテクニックの勝負になると、Rは長い韻を使ったり韻の連打で勝つことが多いですが、そもそも晋平太が短い単語でバンバン踏んでくるタイプなので拾える長めの単語も少なく、さらに会話もしっかりこなしてくるので打ち返すことが難しくなったと思われます。
以上、3試合の解説でした。来週の般若戦が楽しみですね!
画像引用:@2015 Libra Records. All rights reserved.
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