THE罵倒2017レポート
MC派遣社員
みなさんこんにちは。MC派遣社員です。今日はTHE罵倒2017GRAND CHAMPION SHIPに行ってきました。
THE罵倒とは、上野にあるCASTLE RECORDS主催による「ボディタッチあり」の関東のバトルイベントです。
ボディタッチありを正式に発表している主要イベントはTHE罵倒だけであり、故にバチバチな試合が多く行われます。
例えば、2016年に両国で行われた罵倒開幕予選では、相手のバース中にマイクを叩いたり、胸ぐらを掴んだり、そんなことも行われていました。
2011年に小岩で行われたGRAND CHAMPION SHIPでは、3連覇のかかっていたZONE THE DARKNESS(現在のZORN)と戦ったハハノシキュウが、客席のお客さんに、ステージ下から掴まれるなど、下町文化のヒップホップの雰囲気の下、常にギリギリの緊迫感でイベントが行われます。(ちなみにハハノシキュウは1回戦で十影に延長の末勝利しています。)
さて、今年の出場者はこちら。
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今大会の注目は、2016年に続いて2連覇となる千葉の輪入道、恐らくこれでバトル引退となるであろう逗子のLick-Gの2人の刺客でしょう。
(罵倒のGRAND CHAMPION SHIPには毎年、予選通過者以外に、主催が選考枠である「刺客」が用意されます。)
優勝賞金は30万円、さらにKOKへの出場権が与えられます。
1回戦
1回戦は、調子が良い方が勝ち、調子の悪い方が負ける、といった雰囲気が全体にあったと思いました。
また、8×2という少ないターン数の中でいかにミスが少なく、また手数を多くできるかも今回の1回戦のお客さんのジャッジ基準に大きく関わっていたと思います。
1回戦のベストバウトは、小池潔宗対スナフキン。
小池潔宗が上手くグルービーにバイブスを使いながらバースを蹴る中で、しっかりと内容を詰めてお客さんを引っ張っていくのに対し、スナフキンはいつも通りの「彩、紐解き、フィロソフィー」と落とすなど、細かい韻のグルーブを意識しつつ、「ホットな奴ほどクールにやる」などのパンチラインをしっかり決め、勝負は延長に。
実はこのバトル、小池潔宗がじゃんけんに勝って先行を取ったのですが、今回の大会では他大会に比べて、かなり多くのMCが先行を自ら選びました。この勝負に挑む姿勢が「罵倒」なのです。
小池潔宗「先行しか考えてねえ」
延長戦でも
SNAFKN「言葉の濃度、紫のじょうろ、hold on」
小池潔宗「紫のじょうろ垂れ流しっぱなし!」
と、どちらも譲らない攻防。
再び延長にもつれ込んだこの勝負の軍配を分けたのは、後攻SNAFKNの最終バースの細かなグルーブを作る連続押韻。
彼は、いくつか決まったフレーズを使うことが多いのですが、この時の韻は聞いたことがないものでした。
小池潔宗はまたの名を「ドロシー」というのですが、「さっきのドロシー見て火がついた」というような内容をこの後の試合で、4人くらいの MCがラップしていました。
そのくらいの強烈なベストバウトだったんです。
はなび対蛇は最も罵倒らしい、熱量のこもったバトルになりました。
SKY-HI/F-3のビートで行われたこの勝負。実はこのビートは戦極12章の呂布カルマ対ENEMYの試合のビートと同じなのですが、それを知っていたのか、
はなび「蛇?ヘビー級のパンチ食らわそうか?」
と攻めました。
2回戦(ベスト16)
かなり熱いラインが飛び出したのは第2試合のサイプレス上野対KOOPA
ビートは最ッ低のMC/般若
サイプレス上野「ギドラ、雷、ブッタブランド?ペイジャー関係ねえわ、
影響受けたの事務所の先輩スチャダラパーだ」
サイプレス上野「マイク一本、俺の名前はサイプレス上野」
KOOPA「蕨代表、クッパ大魔王、食っちゃうダイナソー」
こちら僕の好きな韻の踏み方でしたので紹介させていただきました!
Lick-Gに延長の末破れてしまったものの、裸武もかなりパンチラインを飛ばしていました。
裸武「上手くなることを諦めたわけじゃない」
裸武「結果ここに立てたことがオリジナルだと思ってる」
裸武「Lick-G最後くらいはこっちを向いてくれよ、最後まで俺の願いは果たされないのか」
T-TANGG対輪入道も良い試合に。
T-TANGG「NGワードまずはMCバトル、背負っていくKNGW」
T-TANGG「追い込んだT-TANGG、終わりだよモヒカンの兄ちゃん」
輪入道「良い加減小手先やめて本気で来いや
T-TANGG「クリティカルヒット?クリスマスでもくるみ割り人形」
輪入道「Bitchとメリークリトリスじゃ」
3回戦(ベスト8)
SNAFKN対BASEはかなりの激戦。草ネタ、ドラッグネタなんでもありの攻防になりました。
BASE「合わす周波数、420、吸う吐く〜」
SNAFKN「俺ら白鼻のトナカイ」
Lick-G対道(TAO)では道の調子がかなり仕上がっており、
道「お前は、バイリン(ガル)猿真似ラッパー、俺は売人のサグラッパー」
といった踏み心地!
さらにLick-Gが「矢吹丈」の韻で会場を盛り上げると、
道「お前は田舎もん、俺のレペゼンは都会の霞町(かすみちょう)」
と完璧な踏み返し。この辺りのライム、僕のお気に入りです。
ただやはりLick-Gのライム量と、ビートへのアプローチは凄まじいものでした。
ここまでいつもの特攻スタイルの調子が良かったRYOTAも前回王者輪入道に敗れ、大会はベスト4へ。
準決勝
KOOPA対BASEは、かなりの接戦。
BASE「さっきお前のネタ吸ったんだけど全く飛ばなかったんだよね〜」BASE「吸イニケーション〜」KOOPA「わんぱくで終わらない出す蛋白コレステロール、これ吸ってロール!」BASE「ロッククライマー、俺は飛んでるライマー」

Lick-G対輪入道は今大会1といっても過言ではないほどの盛り上がりを見せる。
8小節4本で行われたこの試合。2016年のKOKのリベンジに燃えるLick-Gはトッリキーな韻の置き所や磨きのかかった三連符のフローで輪入道を攻める。
輪入道も持ち前の熱いバイブスでLick-Gを圧倒。
しかし、Lick-Gが後攻の最終バースで驚くべき行動に出る!
「iai」の母音を1~4小節で踏み続け、4小節目の切れ目にきっちり客に歓声を上げさせることに成功したLick-Gはマイクを体の横に持ったまま、7小節目までラップをすることなく首を振り続けた!
そして8小節目の最後に
Lick-G「これで勝利決まーーり!」
と再び韻を落としたのだ!これぞill…。
延長になったこの試合。延長ビートはtouch B/hokuto
Lick-Gは先行から客を煽り、手を振らせる。
対する輪入道も確実にビートの切れ目に韻を置き、両者一歩も譲らない攻防の末、軍配はLick-Gに上がりました。
Lick-G「地下の波。俺のスキルはチカーノ波!」


決勝
罵倒本戦の決勝は8×4→アカペラ1分→8×3の3本勝負。
1本目のビートはDo U Wanna/タイプライター&YMG feat.LIPSTORM YURIKA ちゃんみな
先行のBASEの出だしは
BASE「任せろ任せろ、もっと太く巻かせろ」
とスタート。ここまでほとんどと言っていいほどラップの内容が草ネタかドラッグネタ。
しかし彼のそれらのネタには「ユーモア」が含まれており、それがかなりリリカルな強みになっていた。
だが、対するLick-Gは「ガードレール」という単語で5〜6個韻を踏み、即興の能力の高さを見せつけまず1本目を先取。
続くアカペラは、残り10秒のところでカウントダウンの音が刻まれていくのだが、先行のLick-Gがこの音をビート代わりにアプローチする。
対するBASEは最後の最後で
BASE「みんなわかってんだろ?肌はイエローでセンスはニガー」
と強烈なパンチラインを落とし2本目を取る。
最終ラウンドのビートは、罵倒の歴代チャンピオンがマイクリレーを行う予定だというオリジナルビート。
BASEの「シラフはヒップホップではない」という主張に対して
Lick-G「素面でヒップホップでも自由じゃん。ロジックもケンドリックラマーも吸ってない。ケンドリックラマー、30万で天真爛漫」
と見事なアンサーと押印を披露。
さらに
Lick-G「ビート上でもっとモテたいがモットーの世界。」
と綺麗にライムを決めて勝利を収めた。
これによりTHE 罵倒GARAND CHAMPION SHIP優勝はLick-G、賞金30万円とKOK本戦への出場権を獲得した。
BASEは敗戦後、
「みんな!シラフでヒップホップをやってる奴がいたら病院連れて行ってやれ。でも、俺が正しいとは限らない。それぞれのヒッピホップがお前らにもある。」
と語った。








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とりあえず罵倒の実況まとめました#罵倒
— MC 派遣社員 (@mchakenshine) 2017年12月13日